HiHiの雑多な本棚

本の感想と、お金の話。

佐藤明機『パラダイスバード・クロニクル』(駒草出版)

『パラダイスバード』の続編です。ゲートを開いてからおよそ100年後の「あちら側」の世界が舞台。公式サイトには「時代は飛ぶけどいろいろないろいろを前作から引き継いでおります。 」とありますが、前作の登場人物はほとんど出ません。続編なので設定が同じ部分はありますが、前作を読んでなくても多分問題ないかと思います(そんな人はほぼいないでしょうけど……)。

雰囲気は『パラダイスバード』とかなり異なっていると言っていいでしょう。一番の違いは、物語としての明確な「はじめ」と「おわり」が無く、のんびりした異世界の随想という印象。まとめて一息に読むような作品ではないと思います。夜寝る前にでも少しずつ読むのが良いかと。

佐藤明機さんの作品は、絵も世界観もごちゃっとしているという認識なのですが、今作は非常にシンプルな絵です。世界観は複雑なのですが、ストーリー性が乏しいので、理解しなくても読めます。良くも悪くも、異世界を舞台にしたのんびりした日常系という感じで纏まっています。『未来記』という短編が最後に付いていますが、そっちも大体似たような感じですね。

感想としては、悪くは無いのですが佐藤さん独特のアクが薄く、他人にオススメするなら別の作品を選ぶかな、というところ。値段も1000円近くするので、私のようなファンなら問題なく楽しめるでしょうが、そうでない人が読んだら「なんじゃこりゃ」になるんじゃなかろうかと思います。
これだけストーリー性が薄くても、作品としては成立することが分かって、少々衝撃的ではありました。