HiHiの雑多な本棚

本の感想と、お金の話。

田辺聖子『孤独な夜のココア』(新潮文庫)

恋は人生の熱いエッセンス。この本は、暗い孤独な淋しい夜に、あなたの凍えた心を温める熱いココア――

ココアといえば甘ったるいイメージなのですが……この本はどちらかと言うとホットビターチョコレートという感じに思えました。
甘々な恋物語ではなく、起承転結がちゃんとあるというのが素晴らしいです。

一編一編にリアリティと迫力があり、生き死にの物語も多いです。
汚れた部分も含めて、男と女というものがよく描かれていると感じました。

ただ、孤独感に対する癒しみたいなのを期待して本書を手に取ると肩透かしかもしれません。
刊行が昭和のうえに時代を反映した内容ですので、2010年代を生きる私たちとは色々と感性が違うように感じました。まぁ逆に言うと高度成長期ってこんな感じだったんだなぁと参考になる部分はありました。
「孤独」の意味も現代とは違うように思います。「彼氏と別れて淋しい」とかそういう夜なのかなと。派遣切りで明日が見えないとか老後が不安とか、暗い深淵を覗き込むような現代人の孤独には響かないかもしれません。