HiHiの雑多な本棚

本の感想と、お金の話。

FunnyCreative『アーマードール・アライブ4 ~いつか終わりゆく安息の日々~』(ボイジャー・プレス)

人工知能を操り人類を殺戮する謎の電子汚染現象【ゲーティア】の出現によって、滅亡の道を歩む世界。残された人類は自我を持つ人型兵器【アーマードール】を開発し、心無き機械たちとの戦いを繰り広げていた。
学長の計らいで、海沿いの温泉旅館へ修学旅行にやってきた訓練学校の生徒たち。海に水着に温泉に、ハメを外してはしゃぐ人形たちと、それに巻き込まれる愛生文楽。だが楽しい一時を過ごす彼らの陰で、文楽の正体を知る者たちが、密かに彼を狙って動き始めていた??

はっちゃける水着回の裏で、シリアスなストーリーが展開します。例によって詳しく書くとネタバレになってしまうのですが、この巻で張っていた伏線のいくつかが回収され、主人公の愛生文楽の謎はほぼ明らかになります(多分)。
「人間VSゲーティア(人工知能)」という単純な構図が崩れ、先が読めない……というより先が全く見えなくなってラストです。

正直、退廃的な雰囲気で「人間VS人工知能」という物語はどこかで見た……ぶっちゃけ『ガルフォース地球章』なんですが……ような気がしていましたので、ここで大きくストーリーの流れを変えたのは個人的には嬉しい限りです。続きが楽しみな物語は久しぶりですね。

ラストは綺麗にまとまったように見えるのですが……アリスとフェレスは納得しているでしょうが、サラとレヴィアは目覚めたら激怒して血眼で文楽を探しに旅立つと思うのは私だけでしょうかww

パウロ・コエーリョ/山川紘矢『アルケミスト 夢を旅した少年』(角川文庫)

世界中を旅することを望む主人公の少年サンチャゴは、羊飼いになる道を選びます。羊の扱いを覚え、安定した収入を得られるようになるのですが、砂漠を越えたピラミッドに自分の宝が待っているという夢を繰り返し見ます。サンチャゴはその夢を信じ、羊を全部売ってピラミッドを目指すことにしたのでした。

スペインやアフリカ等、実在の地名が出ますが、アルケミスト錬金術師)というタイトルから想像付く通りファンタジーに近い内容です。
ストーリーラインとしては特筆するような部分はほとんどありません。少年サンチャゴが宝を見つけて終わるだけです。にもかかわらず何故世界的なベストセラーになっているかというと、この作品から得られるものが多いからであり、自己啓発的側面から皆さん買っているのではないかと思います。ちなみに私もその一人でした。
そういう目線で見ると、とても不思議な物語です。まず、主人公に感情移入できない人がほとんどでしょう。判断力と決断力が高すぎる上、リスクを平気で取るのです。とても少年とは思えません。又あまりにも割りきりが良すぎて「えぇぇぇ!?」と思えるような行動や考えを迷うことなくします。
例えば、物語の冒頭でサンチャゴは一人の少女に心惹かれます。しかし、旅立つときに彼はこう考え、慣れ親しんだものを置いていくのです。

“……自分をしばっているのは自分だけだった。羊たちも、商人の娘も、アンダルシアの平原も、彼の運命への道すじにあるステップにすぎなかった。”

主人公が旅の途中で出会う人物も不思議であり、自分を王や錬金術師と名乗ります。彼らの言葉を理解するのにも時間がかかることもあるでしょう。

人生を変えようと思っている人、成功に向けて一歩を踏み出そうとしている人にオススメです。リスクも含めて、どのような道を歩くことになるのかを知ることができるかと思います。

最後に、気になった部分を引用して感想を終わろうと思います。

「誰もみな、他人がどのような人生を送るべきか明確な考えを持っているのに、自分の人生については何も考えを持っていないようだった。」

「人は、自分の夢見ていることをいつでも実行できることに、あの男は気がついていないのだよ」

「結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ」

「人が本当に何かを望む時、全宇宙が協力して、夢を実現するのを助けるのだ」

「…………国へ帰れば、僕はお金持ちですよ」「しかし、そのどれも、ピラミッドで得たものではない」

「人は、自分の一番大切な夢を追求するのがこわいのです」

「おまえが自分の内にすばらしい宝物を持っていて、そのことを他の人に話したとしても、めったに信じてもらえないものなのだよ」

「もし、自分の運命を生きてさえいれば、知る必要のあるすべてのことを、人は知っている。しかし夢の実現を不可能にするものが、たった一つだけある。それは失敗するのではないかという恐れだ」

宮澤伊織『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』(ハヤカワ文庫JA)

主人公の空魚(そらを)は、この世界とは別の世界への入り口を発見し何回か足を踏み入れます。“裏側”と彼女が名付けたその世界には、自分以外の人間や動物はいない……と思っていたのですが、白くクネクネする奇妙な生物(?)と遭遇したとたんに全身に力が入らなくなり、絶体絶命のピンチに。そこに現れたのは金髪でスタイル抜群の美人、鳥子(とりこ)でした。

一言で書くと異世界探検モノです。特定の場所が異世界に繋がっていて、現実世界と行き来しながら物語が展開します。異世界には現実の怪談を元ネタにした怪異が待ち受けています。主人公の空魚(そらを)と鳥子(とりこ)そしてもう一人の小桜が、それぞれの目的で探検するという内容。

タイトルにピクニックとあるので、ライトな物語を期待したのですが、探検は結構ハードです。ていうか、表紙にアサルトライフルと拳銃を構えた女の子が描いてあるんだから気付けよって話ですが。
いくら手に入るものがあるからって、何でこんな危険な場所に?と思っていたのですが、物語が進んで理由が明かされるとまぁ納得というところ。結局のところ、友情物語なんですね。
SF系のハヤカワ文庫というだけあって、設定も割とキチンとしていますし、難解な世界観ながら説明は上手いです。

異世界という舞台を上手く使っていて、まるで子供のように友情を深める二人が好ましいです。
気に入った作品で、2巻を入手済みです。

マイク・マクマナス/ヒューイ陽子『ソース~あなたの人生の源は、ワクワクすることにある。』(VOICE)

「人生で最も重要なのは、自分がやりたいこと――ワクワクすることを追求することだ」

本書の内容を一行で要約するとこれになるかと思います。
他の自己啓発本にも似たようなことは大抵書かれていますが、本書の特徴的なのは、ワクワクすること“全て”に同じ量の情熱を注ぐ必要性を強調していることだと感じました。ワクワクすることに優先順位を付けることを否定し、全ての項目に対して少なくとも「小さな一歩」を踏み出すように言っているのです。

こう書くと「願えば夢は叶う」みたいな甘い内容ばかりなのか……と思われるかもしれません。
私は創作の一つとしてイラストを描いていまして、同時に幾つかの案件を持つことがあります。
その際「これは後回しにしよう」と考えて何も手をつけないでいると、その案件はいつまで経っても全く進みません。
ですが、ほんの少しだけでも――アタリを取るとかラフだけでも描くとか――をすると、不思議なことに信じられないようなスピードで作品が完成するのです。
同様のことは本ブログで書いている本の感想についても言えます。後回しにして何もしないと全く進みませんが、ほんの少しだけでも、それこそ著者とタイトルだけでも書き出しておくと、いつの間にか感想を書き上げていることは往々にしてあります。
なのでこの「小さな一歩」という考え方はオススメで、これだけでも本書を読む価値はあります。

ただ、他の事柄については都合の良い側面だけを強調して書かれたように感じました。
ワクワクすることだけをやる人生にはリスクは付き物でしょうし、仕事やパートナーが向こうからやってくるとは限らないのでは?
やりたいこととお金を稼ぐことを切り離して考えることには同意しますが、お金がないと明日の食べ物にも困るわけなので、その辺をどうするかについての答えは残念ながら本書にはありませんでした。
著者はアメリカ人なので、日本人の私とは根本的に違う点があるのかもしれません。

「やりたいことがたくさんあるけど、全然進まない」
「やりたいことが分からない」
と悩んでいる方は、読んでみると良いと思います。

水生大海『だからあなたは殺される』(光文社)

両親が離婚し父親と暮らしていた主人公は、刑事となり独身寮に入ります。母親の自殺をきっかけに高校生の妹と同居することになり、二人暮らしが落ち着いた頃に女子高生モデルの殺人事件が発生。主人公は刑事として、妹は兄を助けるために事件を調べます。次々と明らかになる事実。そして遂に犯人は逮捕されるのですが……。

登場人物の誰もが怪しすぎて、隠し事や嘘が当たり前。「あれ?伏線?」と気になる箇所も多く、ブラフを多数仕掛けて読者を混乱させる手法というところでしょうか。ただ、えげつない内容ですが事件そのものは「本格」ミステリとは言えず、普通に解決してしまいます。残るページ数はわずかですが、タイトルがタイトルだけにこのまま完結のはずがないと思ったら……やられました。

ネタバレになるので多くは書きませんが、イヤミスにしてもやり過ぎです(><
読了後の感想は「女子高生怖いよガクガクブルブル」でした(TT
きっちり本格ミステリなんですが、怖すぎて謎解きとかもうどうでもいいですorz

読み終わった後に非常に嫌な気分になること確実です。
チェイサーとして、ほのぼのとした心温まる作品を隣に置いておくことをオススメします。
(女子高生が登場する『きんいろモザイク』なんて良いと思います)

水野敬也『夢を叶えるゾウ』(飛鳥新社)

冴えないサラリーマンの主人公の部屋に、ある朝「ガネーシャ」と名乗る不思議な生き物が現れます。自らを神様と主張するガネーシャのコーチを受け、主人公は自らの人生を変える課題に取り組むことになるのでした。

……という物語仕立ての自己啓発本です。主人公と一緒に、読者も毎日一つの課題に取り組むよう指示されます。
課題は難しいものではなく、一日で実行できる……とありますが、私にとっては難易度が高すぎるものがいくつかあり、クリアするのに数日かかることがありました。
この手の本は一度ざっと読んで、必要に応じて繰り返し読み込むというやり方が一般的なようですが、本書に限っては一気に読むのはオススメ出来ません。

課題の内容ですが、基本的には過去に成功した人たちがやっていたことや残していった名言等を参考にしていると思われます。
集約すると「他人を喜ばせた分しかお金は手に入らない」「自分のやりたいこと、夢、才能あることを仕事にしないと成功は覚束ない」になるのではないでしょうか。

本書の課題を全てこなしても成功の入り口に立てるだけで、後は自分で考えていくことになります(物語としても、ガネーシャは主人公を途中までしかサポートしません)。
しかし、実行したことと経験したことのみが夢を叶える歩みだと主張されると、納得するしかないです。

「人から言われた仕事をしさえすれば、決められたお金が手に入る」という考えを少しずつ変えていくしか、夢を叶える方法はないんだなぁ……というのが、読み終わった後の感想でした。
少しずつでも、夢や、やりたいこと、成功に近づきたい人にオススメです。

Funny Creative『アーマードール・アライブ 3 ~非情の人形は悪魔の虜~』(ボイジャー・プレス)

公式のあらすじがネタバレになっているように思いますので、ここでは簡単に紹介します。
サラの秘密は概ね明らかになったものの、その秘密そのものが問題になる中、強大な敵からの襲撃を受けます。
状況が混沌とする中で、解決する問題もあり新たに発生する問題もあり……という感じでしょうか。

多くの人死にが出たりもする緊迫した展開で、シリアスな巻なのは間違いないんですが、終盤の「敵」の形態変化に大笑いしてしまいました。ていうか留理絵さん、貴女は何故あのロボットアニメのことを知ってるんですかww
最後のオチも(良い意味で)ひどいもので、ラストの引きは苦笑するしか無く、そして次巻は(たぶん)水着回という緩急の付け方がいいですね。

短編も中々に笑わせてもらいました。

シリアス一辺倒、ギャグ一辺倒ではなく、こうやって上手く相殺しながら話を進めることができるのは流石だと思います。

次巻も楽しみです!