HiHiの雑多な本棚

本の感想と、お金の話。

パウロ・コエーリョ/山川紘矢『アルケミスト 夢を旅した少年』(角川文庫)

世界中を旅することを望む主人公の少年サンチャゴは、羊飼いになる道を選びます。羊の扱いを覚え、安定した収入を得られるようになるのですが、砂漠を越えたピラミッドに自分の宝が待っているという夢を繰り返し見ます。サンチャゴはその夢を信じ、羊を全部売ってピラミッドを目指すことにしたのでした。

スペインやアフリカ等、実在の地名が出ますが、アルケミスト錬金術師)というタイトルから想像付く通りファンタジーに近い内容です。
ストーリーラインとしては特筆するような部分はほとんどありません。少年サンチャゴが宝を見つけて終わるだけです。にもかかわらず何故世界的なベストセラーになっているかというと、この作品から得られるものが多いからであり、自己啓発的側面から皆さん買っているのではないかと思います。ちなみに私もその一人でした。
そういう目線で見ると、とても不思議な物語です。まず、主人公に感情移入できない人がほとんどでしょう。判断力と決断力が高すぎる上、リスクを平気で取るのです。とても少年とは思えません。又あまりにも割りきりが良すぎて「えぇぇぇ!?」と思えるような行動や考えを迷うことなくします。
例えば、物語の冒頭でサンチャゴは一人の少女に心惹かれます。しかし、旅立つときに彼はこう考え、慣れ親しんだものを置いていくのです。

“……自分をしばっているのは自分だけだった。羊たちも、商人の娘も、アンダルシアの平原も、彼の運命への道すじにあるステップにすぎなかった。”

主人公が旅の途中で出会う人物も不思議であり、自分を王や錬金術師と名乗ります。彼らの言葉を理解するのにも時間がかかることもあるでしょう。

人生を変えようと思っている人、成功に向けて一歩を踏み出そうとしている人にオススメです。リスクも含めて、どのような道を歩くことになるのかを知ることができるかと思います。

最後に、気になった部分を引用して感想を終わろうと思います。

「誰もみな、他人がどのような人生を送るべきか明確な考えを持っているのに、自分の人生については何も考えを持っていないようだった。」

「人は、自分の夢見ていることをいつでも実行できることに、あの男は気がついていないのだよ」

「結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ」

「人が本当に何かを望む時、全宇宙が協力して、夢を実現するのを助けるのだ」

「…………国へ帰れば、僕はお金持ちですよ」「しかし、そのどれも、ピラミッドで得たものではない」

「人は、自分の一番大切な夢を追求するのがこわいのです」

「おまえが自分の内にすばらしい宝物を持っていて、そのことを他の人に話したとしても、めったに信じてもらえないものなのだよ」

「もし、自分の運命を生きてさえいれば、知る必要のあるすべてのことを、人は知っている。しかし夢の実現を不可能にするものが、たった一つだけある。それは失敗するのではないかという恐れだ」