HiHiの雑多な本棚

本の感想と、お金の話。

フランシス・ハーディング『カッコーの歌』(東京創元社)

主人公の少女トリスが、池に落ちて記憶を失ったところから物語は始まります。「あと7日」意識を取り戻したとき、耳元で聞こえる声。妹のペンは主人公を偽物と言い、記憶を探るために開いた日記帳のページは破り取られ、異常な食欲が主人公を襲います。

カッコウといえば托卵ぐらいしか思いつかず、入れ替わりネタなのか……?という予想で読み始めました。最初の印象はホラー。得体の知れない恐怖がヒタヒタと忍び寄ってくる感じ。こどもの頃、今では何でもないことが怖かったなぁとか、そんなことを思い出しました。

ホラーはあまり好みじゃないので読み進めるのがつらくなったのですが、中盤に差し掛かった頃にはファンタジーに、そして終盤は冒険ものにw七日間という短い時間の中で、目まぐるしく変化する状況にページを繰る手が止まらなくなってしまいました。
本格ミステリではないので、謎に対して現実的な答えが用意されているとは限らないですが、伏線の張り方と回収が見事でした。

とにかく意外性がすごかったです。登場人物たちの隠れた一面が次々と明らかになり、端役かなと思ったキャラクターが終盤メインになって大活躍。主人公と妹の関係も、どんどん変化していきます。「もくじ」にもミスリードされてしまい、暗鬱なラストを予想したらまさかの……という感じで、最後まで楽しく読めました。

ジャンルは確かにファンタジーなのですが、ミステリ好きな方にこそ読んでほしい一冊だと思います。