HiHiの雑多な本棚

本の感想と、お金の話。

ロバート・F・ヤング/伊藤典夫『たんぽぽ娘』(奇想コレクション)

ロバート・F・ヤングの作品の中から、ボーイミーツガールを中心に選んだ短編集です。

ジャンルとしてはSFになるようですが、ファンタジーに近いと感じました。驚いたのは、1960年代~1980年代にアメリカ人の作者によって書かれた作品にもかかわらず、2010年代の日本のライトノベルやゲームに近い設定が多かったことです。
文学作品なのでページに文字は詰まっていますしお堅い表現も多いですが、どれも引き込まれるような魅力あるお話でした。現代の若い方にも楽しめるんじゃないでしょうか。

ハードカバーで値段も高かったのですが、内容が濃くて何度も読み返したくなるので、その分の価値はあると思います。オススメです。

以下、特に面白いと思ったお話について書き出します。

たんぽぽ娘

表題作。これが一番面白かったですね。とにかくジュリーが可愛いです。ほんの少し背徳感を含んで展開するのですが、ラストでそれは完全に打ち消されて何とも不思議な読後感でした。他のお話にも言えることですが、簡単に恋に落ちすぎだろうと思うのですが、まぁアメリカのお話ですし気にするのも野暮でしょう。

・河を下る旅

驚くほどに、keyの「リトルバスターズ」に似た設定。話の流れも似ています。短編の中で上手く纏めている印象。最後はハッピーでよかったです。この話でも簡単に恋に落ちすぎですが、仕方ないというところでしょうか。

・失われし時の形見

「河を下る旅」とネタは同じなのですが、かなり違う味付け。男の人って自分に都合の悪いことは忘れて、大きく見せようとするものですよね。本当の人生を生きていない、という言葉に考えさせられました。私が部屋に入ることがあったら、「へろへろWONDERLAND」がディスプレイに大写しになっているのでしょうか?

・スターファインダー

宇宙クジラとのコミュニケーションが面白かったです。作者も写植の人も、かなり苦戦したんじゃないでしょうか。